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[後記] 『Saudade Session 《サウダーヂ・セッション》』



 ~ Cabocla Jurema 《カボクラ・ジュレーマ》 ~


    彼女の羽飾りは緑色、それは海の色


    それは、カボクラ・ジュレーマの色 ..



    わたしは、あの澄んだ水を浴びる


    海の女神《ジャナイーナ》が作る雨を ..





※ 森林の女神《カボクラ・ジュレーマ》はブラジル先住民族トゥピナムバの伝説の女性。




「今日はブラジルでは、全土で雨が降っているみたいだよ」と、携帯で世界の天気図をみていたアケタの店、マネージャー・音響担当の島田さんが、開演直前に教えて下さいました。

あれだけ広い国土のブラジルで、どの都市でも同じ天気で雨というのは珍しいのかも。 これも "カボクラ・ジュレーマ”が雨を呼んでいるのでしょうか。



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コントラバス奏者の 吉野 弘志さんの声で、今回初の顔ぶれでのセッション・ライヴでした。その名も 《サウダーヂ・セッション》! 日頃からブラジルの音楽と接することに慣れてしまっている私のような人間だと、中々こういうネーミングは(直球すぎて)はずかしいから避けるのですが(笑)。。今回は サウダーヂ という言葉自体も改めてよくよく見直させてくれる機会だったような気もします。良く聴きなれた曲にもなんだか新鮮な心持ちで接することもできましたし。




《出演メンバー》

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吉野 弘志 (コントラバス)

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今泉 裕 (クロマチック・ハーモニカ)

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オオタマル (アコースティック・ギター)


サウダーヂ とは、人によっていろいろな捉え方や訳し方がされていますが、それにぴったりな日本語の単語は無いとも言われています。行ったことのある人は誰しも経験したことがあるかもしれませんが。 私の場合は、十年前にブラジルを旅したあとに、日本に帰国してしばらく心に感じていた《あれ》のことかと、認識しています。喪失感というか切望感というか、空虚感というか.. よく"郷愁"とは訳されますが、それとも何か少し違うような..でも、何とも切ない感覚です。でもけっして後ろ向きな感じでもなく、離れた場所でさまざまな別の時間が進行していると思うと、なぜか少し元気にもなるような。。 春先のこの時期にはとくに、なぜかそんな事をよく感じる。


さて、サウダーヂ・セッション。


第一ステージでは、カルロス・リラ & ヴィニシウス・ヂ・モラエス共作の2曲から始めました。"Minha Namorada (私の恋人)"そして、"Primavera (春)"をメドレーで..

ハーモニカの音色と、春の空気とが混ぜ合わさったサウダーヂ感が、会場を満たします。こういう曲は今泉さんの得意分野ですね。。"Primavera (春)"は、とくにこの時期にはギターのソロとしてもよく弾くのですが、3人での演奏はより色彩が豊かで奥行きがあり響きが楽しめました、またやりたい。

つづいて、シコ・ブアルキ作曲のレパートリー"João e Maria (ジョアンとマリア)""Tatuagem (タトゥー)""Samba do Grande Amor (大いなる愛のサンバ)"..

日本で、これほど沢山の シコ・ブアルキ の曲をレパートリィに持つ人も少ないでしょう、しかもハーモニカのインストゥルメンタルで。。

"João e Maria (ジョアンとマリア)"は今回はじめて演奏しました。ブラジルではグリム童話の"ヘンゼルとグレーテル" が"ジョアンとマリア" だそうです。アコーデオン奏者のシヴーカが1940年ころに作曲し、 シコ・ブアルキ が生まれたときにプレゼントした素朴なワルツ。そのワルツに30年後、シコがメルヘンティックな子どもの世界の歌詞をのせて出来上がったそうです。

コントラバスとギターとの対旋律が絡み合って、とても面白かったです。器楽的な曲でもあるので、ショーロ演奏者の間でももっと取り上げられたらいいんじゃないかなとも思いました。

"Tatuagem (タトゥー)" につきましては当ブログの記事でも以前取り上げましたのでこちらでご覧ください。→ [こちら]

"Samba do Grande Amor (大いなる愛のサンバ)" は確か 愛を信じて、ずっ~とまじめに(まぁ嘘なんだけど 笑)やって来たのだけれども、これからはもう違う。道端のきれいな花にも注意しながら慎重に生きて行くぞ。 みたいな男の歌だったと思います。ちょっとズッコケな感じの曲なのですが、いまの自分の心情とも(考えようによっては)近くて好きな曲です。ワンノートサンバのような半音での下降の和声進行が所々でみられ、それが転調したかたちのバリエーションとして作られていたりしてなかなか、楽曲としても知的で素晴らしい曲です。シコ・ブアルキの曲のこういう隠れた粋なところが、とても好きです。

コントラバス奏者との共演でサンバをするのは、タイム感の捉え方の違いなどから苦戦することが多いのですが今回は、吉野さんのベースラインがタイトでシャープに、噛み合って心地良くサポートしてくださいました。心地良かった。



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ファースト・ステージの後半には、3人でのショーロにも挑戦しました。アベル・フェレイラ作曲の "Chorando Baixinho (ショランド・バイシーニョ)"。次回のショーロ教室でも課題曲としてやってみようかと思っている曲です。→[こちら]

半音階や音跳びフレーズが有ったりでハーモニカでは難しい選曲をしてしまったようなのですが、今泉さんがかなり時間を掛けて練習・研究をして来て下さったようです。いつものようにショーロに慣れている人たちとの演奏とは違って、何処かぎこちなさは残りましたが、けっして馴れ合いに流れずにお互いの音に集中して演奏出来ました。とても新鮮な喜びをひさびさに感じました。しかもコントラバスからハーモニカの高音にまで至る、ゴージャスで奥行きのある広音域での贅沢なショーロ。大変ではありましたが、演っていただけてよかった。

ファーストステージの最後にはこれまた新曲。シモーニが歌っていたアウヂール・プランキとクリストヴァゥン・バストスによる共作 "Resposta ao Tempo (ヘスポスタ・アゥ・テンポ)" オリゾンタルで疾走感の有るのアルペジオは、弾いていて心地が良いです。ソロギターなどではこういう感覚は中々得られませんので貴重でした。




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セカンド・ステージの最初にはサンバの名曲から2曲、ベースとギターのみでDUOで演奏しました。カルトーラ & カルロス・カシャーサの "Alvorada (夜明け)" と、ノエル・ホーザの "Feitio de oração (祈りの姿)"。お互いの和音の付け方とメロディーの解釈が若干異なっていたので、ちょっとスリリングではありましたが、何か新鮮に感じました。コントラバスのアルコ奏法(弓による奏法)でのサンバ曲はなかなか聴けませんね。リハで吉野さんが語った、どこか《森のかほり》がしていたかもしれません 笑。モーホの素朴な音楽と森とのユニークな取り合わせでもありました。

つづいてエドゥ・ロボの "Pra Dizer Adeu (さよならを言うために)" と、ヘナート・テイシェイラ の "Romaria (ロマーリア)"を演奏しました。ロマーリアでは今泉さんとも初めて演奏でしたが、ブラジルの田舎の風景が浮かんで来そうな牧歌的な曲です。普段はサンバやショーロの様に音の数が多くて空間が埋まっている、都会のざわめきような音楽が多いのですが。そうした中で、こういう曲の有り難味を身に染みて感じます。本当に音が少なくて広々とした音の空間をしばし味わいます。弾いていて、体の間接の間も拡がって緊張が解けて行くようでした。




そしてここで、この記事の冒頭でも取り上げました "Cabocla Jurema (カボクラ・ジュレーマ)"。地球のエネルギーの循環とか、自然への崇拝とかも想像させるとても大きな曲に感じています。旋律にすごく力があります。曲の中間部分では、Samba Chula (サンバ・シューラ) のようなリズムアクセントでコール・アンド・レスポンスのような歌の場面が出て来ます。そこの部分のメロディのとりかたが難しいようで。。また演奏の機会が有ったら、そのあたりの完成度も是非とも高めたい。カボクラ・ジュレーマ、歌の持つ《力》みたいなものを強く感じさせてくれる魅力的な曲です。

そして今回のライヴの中でも実験的で、キモとなるあの超有名曲 ルイス・ゴンザーガ&ウンベルト・テイシェイラ作曲の Baião (バイアゥン)"Asa Branca (白い翼)"。ブラジル北東部の音楽では、しばしば Rabeca (ハベッカ) と呼ばれる素朴なバイオリンが16部音符を刻むことがありますが、吉野さんにコントラバスのアルコ奏法でこれをお願いしました。アレンジも少しコンテンポラリィなヴァージョンのを採用して演奏しました。なかなかワイルドで、即興もあり楽しかったです。

最後に、ドリヴァル・カイミの "Saudade da Bahia (バイーアの郷愁)" で締めくくりました。セカンドステージでは、ブラジルの中でもディープな北東部の色合いが強かったですね。

3人という小回りの利く編成から、とても多様なレパートィをと欲張ったライブでした。いろいろと新しく試すことが出来ましたし、自分自身の表現の幅も視野も少し拡げられて有意義なセッション・ライヴとなりました。何より演奏を楽しめました。



また、次回にもご期待下さい!















[ 2013/04/06 18:33 ] ライヴ・レポート | TB(0) | CM(0)

[後記] 『ケペル木村とオオタマルのブラジル音楽おもしろ講座 ~ ジョアン・ジルベルト ~』

とつぜんの初夏のような陽気で、桜もびっくりしていきなり五分咲きまで開いてしまったようです。そんな春の日でした。

音響のチェックと食材の準備があるので少し早めで、開場の一時間半ほど前にはマデイラに到着してしました。



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硝子に囲まれた響きのよい空間。。陽だまりの中でしばらく生音でギターを爪弾きながら、今日は何を演奏しようかなどと考えていると、ケペルさんが到着。2人で会の進行などを簡単に打ち合わせしたあと、音響のセッティングなど始めました。



最初は、ジョアン・ジルベルトが来日した際に、宿泊していたホテルの部屋でも愛用していたという円筒形の《波動スピーカー》なる物から音を出して見ました。いやみのない自然な音なのですが、いま少し音が遠いというか物足りなさを感じたので、いつも通りのPAシステムが繋がっているJBLの大型スピーカから音を出すことにしました。

PAのシステムであるにもかかわらず、音像が大味にならず細部までかなり細やかに再生されています。聴いていて実に生々しくそれでいて心地がよい。場所の響きと再生機の性能の効果でしょうか。快適な音でいろいろな音源を試して聞いているうちに、ケペルさんがコクリコクリと。。(笑) 選曲や食材の準備etc..で夕べはあまりお休みになれなかったのでしょうか?本当におつかれさまですm(_ _)m



スピーカーからは2003年の東京国際フォーラムでの演奏音源が流れていました。他のライヴ録音と比較して、とても角のとれた音質で録音されています。まろやかな響きです。そして、会場に5千人もの観客が同席しているとは到底思えないほど静か。故 黒田恭一さんが《近年では貴重になってしまった"黄金の静寂"》と形容していますが、聴衆5千人がジョアン・ジルベルトの 《声とギター》 の一点に集中している様子が想像出来ます。当時実際にコンサート会場の客席にいらしたケペルさんに、客席の10列目位までの音の感じを思い出して貰って、オーディオの音量、音質などを決めました。


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Kibe(キビ) 製作中のケペル氏



本日のおつまみである、ブラジル料理の Kibe(キビ) を油で揚げて準備していると大皿一枚分ほど出来上がった頃から参加者の皆さんがぞろぞろと到着。定刻を少し廻ったところで会を始めることにしました。


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BGMで流しておいた2003年の東京公演のおかげで、会場内には例の『平和的なもの』(別記事を参照→こちら)がすでに充満しています。



まず、ケペルさんからジョアン・ジルベルトがジョビンやヴィニシウスと出会っていなかったら、どんなだったろうか?という問題提起がされました。おそらく、そのままのこの演奏スタイルで、やはり既成のサンバの曲を演奏していたことだろうと。。

ジョアン・ジルベルトがデビューを果たした当時、同じようなギターのバチーダの奏法はさして目新しいものではありませんでした。では何が新しかったのかと考えると、ギターという、様々な音をまるでスポンジのように吸い込みやすい楽器に、自らの声を染み込ませることで一つの楽器として一体化させ、極力感情の移入を抑えた形で表現をした点でしょう。これによってリスナーや聴衆との関係を、よりパーソナルな物にすることが可能になりました。そして、これは当時の時代に合ったサンバの新しい表現方法のひとつだったとも言えるかもしれません。



そんな事も念頭に置きながら、1958年 EMI録音の『Chega de Saudade 想いあふれて』から聴いて見ました。2分足らずの短い録音の中に実にコンパクトにアレンジが施されていて歯切れもいい。それでいて決して単純ではなく、極めて精妙な手法で新しい時代に対する躍動感が表現されています。何度聞いても新鮮に感じます。

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1959年出版の『Chega de Saudade 想いあふれて』の楽譜




ケペルさんが所有する 1959年に出版された、当時の『Chega de Saudade 想いあふれて』の楽譜を回覧しました。曲の題名の下には<Samba Choro>(サンバ・ショーロ)と記載されています。まだ<ボサ・ノヴァ>という言葉がまだ世に定着していないことを物語っています。さらに、レコードの発売からこの楽譜が出版される一年間で、実に40組以上のアーティストがこの曲を録音しているということも記載されています。当時、いかに新しい感覚を備えた曲で、大勢の人に受け入れられたのか伺えます。

次に聴いたのは、1962年にリオの『ボン・グルメ』という場所でおこなわれたライヴ録音。ボサノヴァのムーヴメントが一般に 1958年~1964年 と言われていますがまさにその真っ只中ということになります。ヴィニシウス、トム・ジョビン、オス・カリオカスetc..が一同に会して行われた伝説的なライヴの中からジョアンが歌っている部分を聞きました。アマチュアの録音収集家が録音していたテープが奇跡的に残っていたそうです。録音状態は決して良いとは言えませんが、時のボサ・ノヴァ・ブームの熱を感じるには十分な録音でした。


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『JOAO GILBERTO / EN MEXICO』

アルバム『ゲッツ・ジルベルト』の米国での成功を経て、ボサノバのブームもすでに落ち着いていた 1970年。 軍事政権下となっていたブラジルを離れたジョアン・ジルベルトは、メキシコに住んでいました。私生活ではこのころ妻であったミウーシャとの間にベベウ・ジルベルトも生まれ、比較的に安定した時期だったそうです。やはり米国の西海岸に住んでいたギタリストでプロデューサーのオスカル・カストロ・ネヴィスの協力を得て製作した、『JOAO GILBERTO / EN MEXICO』というアルバムから『ベサメ・ムーチョ』を聴きました。この頃からスペイン語やイタリア語、英語のレパートリーも加わって行ったようです。

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『三月の水』


そして、次に聴く1973年の作品『三月の水』でも、いろいろと試行錯誤の跡が伺えます。素晴らしいグルーヴ感を維持したままで小節を無視した《突っ込み歌い(?)》の妙技、これを確立したのもこの時期と伝えられます。サンバのキュビズム的表現(笑?)はたまたアブストラクチュアとも言えるかもしれません。


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しばし休憩をはさんだ後、このアルバム『三月の水』にも収録されているワルツ『ベベウ』をギターのソロで演奏しました。数少ないジョアン自身の作曲によるものです。アルバムの録音では、暖かい感じなのですがどこかシュールな雰囲気を持った不思議な曲です。子守唄のように、ただ淡々とメロディが流れているように弾くのは結構難しい。。

この1973年の作品『三月の水』(原題はJoão Gilberto)が演奏スタイルの上でも、一つのターニング・ポイントとなるくらい重要な作品であると、ケペルさんも私も意見が一致していました。ギター、歌、パーカッションのみというシンプルな編成でありながら、リズム的なバリエーションと色彩に富んでいる。ギターのインストゥルメンタルがあったり、出身地でもある北東部の音楽を取り入れた曲があったりと、内容的にもとても濃い物です。考えても見れば、フィンガー・ノイズ(ポジションの移動の時に出る雑音)なども殆ど無いしギター演奏者としても優れた技術の持ち主なのです。そういった点でも十分に堪能できます。3曲ほど集中して、続けて聴くことにしました。


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かくして確立されてきた、声とギターの小オーケストラ "João Gilberto"と実際のオーケストラを共時させて見ようという試みも当然の事ながらなされたようです。

クラウス・オガーマンによる 1977年の『Amoroso イマージュの部屋』 と、クレア・フィッシャーによる 1991年の『João ジョアン』から一曲ずつ比較するように聴いて見ました。両者ともジョアン・ジルベルトの歌とギターを先に録音したものに音を加えて行く、という手法には違いは有りません。けれども、その"ジョアン・ジルベルトの音楽"というものに対する理解とアプローチが随分と異なっているので、比べると面白い。

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『Amoroso イマージュの部屋』


『Amoroso イマージュの部屋』では、オガーマンのオーケストラ 対 ジョアン・ジルベルトという性格が強く、壮麗で華麗な音響世界が圧倒的に空間の主導権を握ってしまっている。ギターの持つ浮遊感や透明感、リズムの緊張から生まれるグルーヴなども損なわれてしまっていることが少し残念。時々刻まれる32ビートもしばしば耳障りに感じます。ジョアンの歌が過度に湿っぽく感じられて仕舞うのもそのせいだろうか? ただ、当時の時代を考えて一種のクロス・オーヴァー・ミュッジックと捉えたら、良いのかもしれませんが。。

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『João ジョアン』


『João ジョアン』では、小回りの利く木管とシンセサイザーのブレンド、ストリングスの音圧がアクセントとして効果的に働いている。ドメスティックで複雑なシンコペーションやブレークにも細やかに対応していて、ジョアン・ジルベルトの音楽の襞(ひだ)にしっかりと食い込んでいる感じがします。

両作品を比較して、録音現場での状況の違いや録音機器の進歩、制作コンセプト自体の違いなどを考慮するとしても、やはりジョアン・ジルベルトは根っからのサンビスタなのでそこは空け渡せない。というか、そうで居てほしいと思ってしまうのは私だけだろうか。この2作品の対比から、少なくともデリケートに絡み合っている《声とギター》を引き離すことが出来ないアーティストである、という事実を物語っているようには感じます。

最後には、やはりライヴ演奏を聴きながら締めくくろうということで、1996年にイタリアのペルージャで行われたジャズフェスティバルでの演奏を聴きながら閉会としました。子気味の良い軽快な演奏が目立ちます。心地が良い。多分ノッている日の演奏ですね。



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ジョアンジルベルトの音楽をこんなにも多く、通して聴いたのは今回が初めてでした。

同じスタイルを頑なにずっと続けているアーティストという安直な認識しか持って居ませんでしたが、時期によっては冒険をしていたり、思っていた以上に奥行きのある深い音楽設計をしていたりととても気付かされることが多かったです。あと、意外にもかなり即興的な心持ちで、音楽に臨んでいる人なのだなと驚かされもしました。


それから何よりもジョアン・ジルベルトが、リスナーや聴衆の一人一人との音楽的な対話をとても大切に考え、そうした個々の関係の上に彼の音楽が成り立っていることもよく理解できました。



彼の音楽を作っているのは良質な聴衆でもあるのです。



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次回の『おもしろ講座』、日程が決まり次第にまたお知らせします。



おたのしみに!







[ 2013/03/21 18:44 ] ライヴ・レポート | TB(0) | CM(0)

『ジョアン・ジルベルト João Gilberto』 をあらためて聴く

『おもしろ講座』 で今度予定しているジョアン・ジルベルトについて話し合うために、ケペル木村さんとミーティングを行いました。

講座で、ジョアン・ジルベルトをどのように紹介しようかと悩んでいる私に、ケペルさんが音源資料を多数貸してくださいました。

芸風が殆ど変わらないアーティストですし、熱狂的でかなりマニアックなファンも多いと聞きますから、私ごときがどんな解説を加えていったら良いのやらなどと考えると、手も足もでない風なのです。

ケペルさん曰く、 ”とにかく 先入観を排除して聞く ということから始めては?” とアドバイスを受けました。


殆ど"禅問答"のようですが (笑)。。

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お借りしたCD音源の中からまず、ライヴ演奏を片っ端から聞きはじめることにしました。




♪~~~~~~~~~~~


クルーニーな声と、ギターの音がスピーカーから零れ、漂い始める。


数分後、おだやかな空気が部屋中に充満して来て 何か ~平和的なもの~ が周囲を支配します。




 1994年 サンパウロ~♪ 1985年 モントルー~♪ 2003年 東京国際フォーラム ~~♪ などとつづきます。




ライナーを読みながら ”たった一人での録音作品は意外にも後の方なんだな ”

 ..っと余計な情報などは、すぐに《先入観》へと繋がってしまいますから、要注意。。


~~~~~~~~~~~♪



部屋に流れる 声とギター はもはや、ただひたすらに ~平和的なもの~ を生産し続ける 『平和再生機』 という家具になっています。。




気がつくと、もう陽が暮れようとしている。

一日中、”平和ボケ”に浸っていた自分の姿が、そこにはありました(笑)。 何たる幸福。




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エリック・サティが 『家具のような音楽』 を目指したと読んだことがあります。

ジョアン・ジルベルトは 『観葉植物のような音楽』 だと感じました。



観葉植物のように、刻々と傾きを変える陽射しを受けて 一日のうちで決して同じ色彩を放出する事はないのですが、つねに部屋中に穏やかな響きと光を漂わせ続けているのです。





サティの言うところの《家具》というものの引き出しから、サンバやらボサノヴァやら取り出し去ったとしても、ジョアン・ジルベルトの場合は、『平和再生機』 という家具でありつづけるのでしょう。。


ジョアン・ジルベルト は ジョアン・ジルベルト なのです。



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あらゆるカテゴリーや先入観を受け付けない。そんな世界観すらジョアン・ジルベルトからは感じます。

そうした現実世界からかけ離れた質感を維持するためなのか、数々の奇行というのも頷けるかもしれません。



日本で知られるようになって以来、幾度もこの《家具》に挿さった(演奏スタイルやら、歌唱法、ギター奏法や、サンバ、ボサノヴァ、Jazz、音響・録音にいたるまで)あらゆる引き出しの中をかきまわして探索する試みが、大勢の人たちの手によって成されて来たと思います。

でも、いずれもこじんまりとしたカテゴリーに終わってしまいます。




ライヴCDを聞き一貫してひとつ思ったことは、人間から人間に(一対一で)語っている、加えてちょっと祈りにも似たような姿でした。



録音やマイクの技術が向上し、ひとりひとりのリスナーに語りかけることが出来るようになった時代に、このアーティストも自分の居場所を見つけた、とよく語られています。

5000人で埋め尽くされたコンサート会場においても、まさにこの(一対一)でのより良い関係を、常に追求している人なのかも知れません。



と、話が膨らんだところで、講座をどのようにしようか (笑)。。



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第5回目 『ケペル木村とオオタマルのブラジル音楽おもしろ講座』~ジョアン・ジルベルト~

3/20[水] OPEN14:30/START15:00~

詳細→ [こちら]




[ 2013/03/05 18:32 ] ライヴ・レポート | TB(0) | CM(0)

[後記] オペリータ「うたをさがして」序章 を観劇して

日記です。




《 旋律は、音楽のあらゆる要素のうちでもっとも耳に感じやすく、もっとも獲得しにくい物だ.. 》


と、作曲家 ストラビンスキーが語っていました。 そこでは、あのベートーベンが全生涯にわたって、自分に不足していた 旋律 の才能を哀願しつづけていた、とも述べています。




多種多様なカテゴリーに分断されてしまって、複雑な問題も絡み合い苦悩している現代だからこそ、今


『うた(旋律)』


なのかな。。



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長い年月に亘って音楽のいろいろな地を、その知的な観察眼とともに旅をして来られた 齋藤徹(cb) さん。

そして、(cb)さん、喜多直毅(vl)さん、さとうじゅんこ(歌)さん からなるこの 『うたをさがして』トリオを初めて聞いたのは、西荻窪のアケタの店で2年ほど前でしたか。



即興音楽や現代音楽などの複雑な音楽をも通り、到達した徹さんの 『うた(旋律)』の世界にとても興味をもって聞いていたし、拝見するたびにいつも心に何か熱いものを感じさせて貰っていました。


と同時に、特定の音楽体系の重力に捕捉されて只々周回軌道をさ迷っている、己の小ささも浮き彫りに。。演奏をみて、広い視野を授かって帰る日も多々でした。。




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今回は、 昨年の来日公演でも驚くべきパフォーマンスを披露してくれた ジャン・サスポータスさん (ヴェム・ベンダース監督の3D映画 『Pina』にも出演)とともに。 乾千恵さん作 オペリータ 『うたをさがして』序章 としての公演。予てより、とても楽しみにしていました。

脚本ができてから時間もあまり無かったそうですが、言葉と音、ダンスとの複雑な絡みを克服して、良く漕ぎ着けたものだなぁと。。4人のポテンシャルの高さにもあらためて感服。

311の震災という私たち日本人にとって共通の問題。この作品は、これを受けての着想でもあるわけです。

ジャンさんの、内面に熱いものを秘めた繊細な動き。徹さんの激しく厳しくも何処か勇気づけられる楽曲(うた)。そして、それに光と色彩を音で投影する三人の音楽。。


このオペリータ(小オペラは)、発展系だそうです。


来年の公演での進化が、ますます楽しみになります。。




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齋藤 徹 さんのブログ での関連記事↓

http://travessiart.com/blog/5521/


http://travessiart.com/blog/5505/




[ 2013/03/05 15:04 ] ライヴ・レポート | TB(0) | CM(0)

『タトゥー (シコ・ブアルキ)~Tatuagem (Chico Buarque)~』

久々に日記です。


隣人より、”自分の宣伝ばっかり書いていると、みんな読んでくれなくなっちゃうよ~”というごもっともな指摘もあり、今日はパソコンに向かっています。

ハーモニカ奏者の今泉さんから郵便が送られてきて開けて見ましたら、入っていたのがこの曲の譜面でした。

なぜ、バンマスがこの曲を選曲したのかはよくわかりませんが、時間もありましたので詞など曲の意味について調べてみることにしました。(最近では、意味の分からない曲は極力やりたくないので、時間がある時にはなるべく調べるようにしています。)




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曲は、1974年にレコード発売されるはずだったのですが、検閲にひっかかり6年間お蔵入り。(当時ブラジルでは軍事独裁政権下でしたので。)しかし、軍政下真っ只中の1973年には映画のサウンドトラックとして世に出したようです。映画監督(Ruy Guerra フイ・ゲーハ氏)との共作になってます。


ボーイフレンドに対して病的に偏愛(ストーカー的?笑)する女の子の歌で、当時の体制に対決した歌です。1番→2番→3番、と徐々にエスカレートして血なまぐさい言葉が選ばれているようにも感じます。




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『タトゥー(刺青)』/シコ・ブアルキ


夜になったら

タトゥー(刺青)になって、あなたの体にとどまりたい。

くっ付いて行って元気付ける

いつまでもあなたの奴隷として

擦っても洗っても落ちない

そんなタトゥー(刺青)に



夜になったら

踊り子になって、あなたの体の中で遊びたい。

あなたのその弛んで、萎んで、くたびれて死にそうなうんざりとした腕のなかで

光を照らし飛び起こさせ、狂わせる



夜になったら

あなたの背中の十字架になって、重くのしかかりたい。

そして傷つけたい

お望みならば..



微笑みながら腐食剤としてあなたの《傷痕》でありたい。

生きた体に、炎と焼き鏝で冷やかに印された《傷痕》に



銛(もり) 人魚と蛇 母のような気持ちで

あなたの全身に落書きする


感づかれないようにね...




(訳:オオタマル)



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↓こちらページの詞を参考にしました、曲も聴けます。
http://letras.mus.br/chico-buarque/45179/




と、ちょっとコワイ感じです。。


安心して下さい、ブラジルの女性にこういう方が多いわけでは有りませんので。。



言うまでも無く、《あなた》は当時のブラジルの軍事政権、この主人公(女性)はシコ・ブアルキなどの反体制の文化人たちということになるでしょう。直接的な表現が制限されて、仲間が捕らえられたり拷問にあったりした時代、巧みに両義句を使い表現されています。

《くたびれ》て《萎んで》しまったブラジル。それでも《母》の気持ちをもって言葉と歌で《タトゥー(刺青)》と成り、根強く対決した壮絶な曲です。。《十字架》となって当時の政権による愚行の《重さ》を問いかけ、《傷痕》は消しえない汚点であると現代にも投げかけているかのようです。



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寡黙な今泉さんが、ハーモニカでいかに歌い上げてくれるか楽しみです。



日記のハズが、やはり最後はライヴの宣伝になって仕舞いますが。。f(~~; 

お時間、ご都合が合いましたら是非お運び下さい。

当日は、私の43回目のバースディでもあります。


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2/10(日)20:00-

【今泉裕(harm)Band】

[場所] 西荻窪 アケタの店[HP]

¥2,500-(1Drink付)




[ 2013/02/06 19:31 ] ライヴ・レポート | TB(0) | CM(0)
YouTube
2010.8.1 BACK IN TIME
with 山内三咲(vo)
ライブスケジュール

<<2015年>>

4/4(土)15:00-
【Mesa~ブラジル音楽の食卓~】
新富町マデイラ
オオタマルg、齋藤徹cb、さとうじゅんこvo、喜多直毅vl

4/11(土)朝11:00-
【オオタマルのショーロ教室】
西巣鴨マルメラアダ

4/17(金)19:30-
【ホーダ・ヂ・ショーロ】
吉祥寺アウボラーダ

4/18(土)19:00-
【ブラジルナイト@小岩倶楽部】
小岩 カフェ小岩倶楽部
(東京都江戸川区南小岩5丁目21−15)
℡ 03-3673-3193
オオタマル7g,他 ※禁煙>

4/22(水)20:00-
【オオタマル(g,vo)のソロ】
平井タイム・アフター・タイム
※禁煙です。

4/25(土)19:30-
【オオタマルg,vo ライヴ】
吉祥寺アウボラーダ
オオタマル7g,vo 小森慶子cl 千田利貞perc

5/23(土)15:00-
【オオタマルg,vo ライヴ】
新富町マデイラ
オオタマル7g,vo 小森慶子cl ねこいちperc ※禁煙>

5/26(火)19:30-
【ねこに聞かせるサムバ+1】
西荻窪音や金時
オオタマルg、中川恭太cl、かみむら泰一sax

〈more info〉
アクセスカウンター