7弦ギター オオタマル * official website

7 strings guitarist; choro,bossa nova,samba,brazillian style

ホーム > アーカイブ - 2012年03月

ケペル講座報告(ブラジル音楽系ワークショップ後記)

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何度かにわたり、お送りしてきたブラジル音楽系ワークショップ。今回は、ケペル木村さんをお迎えしてお送りしました。

前回、前々回とブラジルのリズムや楽曲を体感してもらったりして解説してきましたが、何か表層的な部分しかお伝えできていないという反省とジレンマを抱えたままでいました。リズムのシステムや楽曲形態の種類の多様さなど、日本で耳慣れているJAZZやBLUES、POPS、とはあまりに相違点が多いために、その形式的な解説にとらわれすぎていたようにも思えます。ま、ひとえに私自身の理解不足や説明能力の未熟さに起因するところでしょうか。。 (._.)


そうした反省点もあったのと、いよいよリオの音楽を離れて、ブラジルの大地の音楽、ノルデスチ(北東部)の音楽にも乗り出してみたいと言う野心もあり。。で、ケペル木村さんをお呼びしちゃおうっという流れだったわけです。


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ケペルさんとは長い間の知り合いなのですが、今回こうして向かい合って一緒に音を出したり、会を設けさせていただくのははじめてでした。


事前の阿佐ヶ谷、中南米音楽の事務所での打ち合わせで、どんな内容にして行こうかなどを話し合いました。

率直に僕のほうからは北東部の音楽の紹介、リズムや楽器など解説を申し出ました。するとそこで、興味深い内容がケペルさんの方から出てきました。

アメリカでジャズからフュージョンに移行する時期に、実はブラジル人ミュージシャンやブラジル北東部の音楽が大きな影響を与えているというのです。


では、ということで。●北東部音楽『バイヨン』の紹介 ●ジャズ、フュージョンとブラジル音楽との関連性 の二本柱に絞っていこうっということになりました。サブタイトルも 『’70年代、ジャズ、フュージョンとブラジル音楽の交差点』 と付けさせていただきました。

って書くと、とても話はスムーズな印象を受けますが。。ま、とにかく話がよく脱線するひとで(笑)。。  『ものしりおやじ』とは得てしてこうゆうものです。(^^; さまざまな知識とおはなしが炸裂。15:00から始まった打ち合わせが、終わったのは20:00近く。至福の時間でした。(~~)


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ワークショップ前日。打ち合わせでも話していたバイヨンを紹介するため、A.C.ジョビンの『Stone flower』を仕込んでおこうと、ひとり曲と向かい会いました。

もともとオーケストレーションのある曲で、ギター一台で弾くのはかなり困難。意外と緻密なアレンジとリズム・センスが要求されます。

前回のジョビン作品のライヴでもとても感じたことですが、ジョビンの音楽には壮大な世界観と『構造』がある。バイヨンという素朴な音楽形態を採用しているにもかかわらず、動かしがたい音の配置と完璧な構造。美しい建築物をみるようです。そうした『構造』が即興演奏を重視するジャズ演奏家たちとの距離感を作っているのですかね。

身近でフォーキーなメロディが軽快にはじまり、何度も刺激的な転調を繰り返すうちに気がつくと、頑強な和声構造と荒涼なノルデスチの大地に変貌していく展開が、たまらなく好きです。『Stone flower』、もっと掘り下げたくなる曲のひとつになりました。エウミール・デオダートのアレンジ譜を参考にさせていただきました。


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ワークショップ当日。

最初に入って来られたお客さんたちと一緒に前回からやっているリズムトレーニングをサンバを使って手短に。今回はセッションが重点ではないうえにお話が長くなりそうだから、(^^; 早々に切り上げさせていただきました。

ケペルさん講座開始~。

この会の本筋から離れないよう慎重に、最初はブラジルからアメリカに紹介された最初のポピュラー音楽。カルメン・ミランダの映像からです。透き通るような声量が観客を魅了している様が伺えます。まさに大衆のためのポピュラー音楽。映画への出演によって世界的にブラジルの音楽が紹介された時代です。

時代は下り1960年代スタン・ゲッツ、アストラッド・ジルベルトの映像。マイクの進歩により録音技術が向上。大勢の大衆に発信していた音楽が、一人ひとりの個人に向けて語り掛けられる表現が可能になったことを取り上げました。ボサノヴァのアメリカでの成功を通して日本にもブラジルの音楽が紹介されたことも取り上げました。

弾き語りをするフローラ・ピュリムの歌に絡んで、若き日のジャック・ディジョネット(dr)、ミロスラフ・ヴィトウス(b)が演奏する映像も印象的でした。明らかに別のグルーヴなのに(はっきり言って、混ざっているとは言いにくい)クールにどこまでも同時進行している状況。ジャズ演奏家のクールな部分の感性も、その後のマイルス・デイヴィスやウェザー・リポートなどのフュージョン・ミュージックへの移行につながっているのでしょう。

この映像を見ても思いましたが、(サンバ)+(ジャズ)→(ボサノヴァ) という考えは信憑性に欠けたアメリカ側からの偏った見解に過ぎないのでしょう。ジョビンがアメリカ人のインタビュアーに怒りをあらわにしたというのもうなずけます。

全く出所と構造が異なる音楽が、共存するということはとても難しいことです。

その橋渡しをしたアーティストとして、キャノンボール・アダレイの映像を取り上げました。ファンキーな演奏のリズムは良く聴くとバイヨンにも似ています。新しいもの好きのキャノンボールは、黒人以外のミュージシャンを積極的にジャズフィールドに取り入れていったということです。ジョー・ザビヌル(オーストリア人)やブラジルからは当時まだ来たばかりのドラマー、アイアート・モレイラなどです。そのキャノンボールのステージを観たマイルス・デイヴィスが彼らを自分のグループに起用して行ったそうです。

当時ブラジルからアメリカに来た優れたドラマーたちは、アメリカでのポジションを確保するのにとても苦労したそうです。泣く泣くトライアングルだけにさせられたり、パーカッション奏者に鞍替させられるるケースもあったと指摘しています。

アイアート・モレイラは、ブラジルでも南部の地方の出身。こうした状況下のアメリカで打ち勝っていくためにかれはリズムの宝庫である、ブラジル北東部のリズムを独自に研究、積極的にドラムセットやパーカッションセットに転用して行ったそうです。フュージョンのドラミングでよく耳にする、ウラ拍で入るハイハットはノルデスチバンドの手持ちシンバルのタイムとおなじだそうです。

やがて、時代はフュージョン・ミュージックへと移行し、パーカッション奏者の地位を拡張していくわけです。マイルスバンドが採用した、ドラム+ベース+パーカッション というリズムセクションはこのころ採用されはじめて、現在ではポピュラー・ミュージックで不動のフォームになっています。

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第二部は、ノルデスチ(北東部の音楽)。予め仕込んで来た『Stone flower』の演奏から始めました。

はじめて、ノルデスチの打楽器『ザブンバ』と一緒に音を出しました。『ザブンバ』は両面太鼓で、表皮がバスドラム、ウラ皮がスネアドラムのような音が出せるようになっています。竹ヒゴの様なバチと、マレットを両手にもって楽器は肩から提げてかまえます。

ブラジルの打楽器の多く(ザブンバやパンデイロなど)は、起源が中東のものが多いそうです。トルコの軍楽隊などが打楽器を進歩させたそうです。

この日バイヨンは、ドラムセットでと、ザブンバでと両方やってもらいました。ギターとは圧倒的にザブンバと一緒のほうが相性がいいようです。

ノルデスチの打楽器で欠かせないもののひとつが、トライアングルです。ミュート音と開放音を巧に叩き分けて、軽快な16ビートを繰り出します。お客さんにも体験していただきました。

もうひとつ、ノルデスチのリズムのうちから『ショッチ』を紹介させていただきました。『ショッチ』は3連ノリというか、ちょっと跳ねた感じのリズムです。スコティッシュのポルトガル語読みからそう呼ばれ、ブラジルに駐屯していたスコットランドの軍楽隊のリズムが、元になっているそうです。ゆったりとしていて『レゲエ』のもとになったとも言われています。トライアングルとザブンバを使って演奏しました。



そのあと、ノルデスチのバンドの映像などを観ながら、話はまたもや脱線。。ブラジルのテクノロジーや文化に関係した話にもなりました。


テレビ放送の開始年や携帯電話の普及、鉄道の自動制御etc..技術的に日本に遅れていることはあまりなく、むしろ先進のテクノロジーもあるということ。航空機の技術や石油の掘削・精製技術etc..

文化面の支援システムなどでは日本のほうが、むしろ遅れをとっていることも話されました。歴史的に、アメリカの対南米政策のひとつで共産主義化防止のため。娯楽を奨励するようしむけたことも、好い意味で文化擁護に反映しているとのこと。

確かに日本ではそうした文化援助に対するシステムは、一部の伝統音楽だけに限られています。ブラジルだと実績にもよりますが、こうしたノルデスチのバンドなどにも支援の策がとられているそうです。(ジルベルト・ジルが文化大臣だったりしたしね。)

こうした恩恵の中で感性をフルに、している国民ですから。音楽の神は今はブラジルにいるのかもしれませんね。

日本人が、『生権力』によるストレスを感じにくい国民性からなのか、島国的に先進国神話に酔っているからなのか、こうした情報が本当に未だに報道されないのは、いつも残念におもいます。



最後に『イパネマの娘』をノルデスチのリズムで演奏して締めくくりました。


ご来場のみなさま本当にありがとうございました。


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とても盛りだくさんで内容の濃い時間でしたが、動員数が少なかったのがとても残念でした。


自分にとりましても発見と刺激、たいへん実りの多いワークショップだったので、またケペル木村さんとはご一緒させていただけたらと思いました。



より掘り下げられ整理されたかたちで、お送りできたらと思います。ご期待下さい!



























[ 2012/03/30 14:44 ] ライヴ・レポート | TB(0) | CM(2)
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2010.8.1 BACK IN TIME
with 山内三咲(vo)
ライブスケジュール

<<2015年>>

4/4(土)15:00-
【Mesa~ブラジル音楽の食卓~】
新富町マデイラ
オオタマルg、齋藤徹cb、さとうじゅんこvo、喜多直毅vl

4/11(土)朝11:00-
【オオタマルのショーロ教室】
西巣鴨マルメラアダ

4/17(金)19:30-
【ホーダ・ヂ・ショーロ】
吉祥寺アウボラーダ

4/18(土)19:00-
【ブラジルナイト@小岩倶楽部】
小岩 カフェ小岩倶楽部
(東京都江戸川区南小岩5丁目21−15)
℡ 03-3673-3193
オオタマル7g,他 ※禁煙>

4/22(水)20:00-
【オオタマル(g,vo)のソロ】
平井タイム・アフター・タイム
※禁煙です。

4/25(土)19:30-
【オオタマルg,vo ライヴ】
吉祥寺アウボラーダ
オオタマル7g,vo 小森慶子cl 千田利貞perc

5/23(土)15:00-
【オオタマルg,vo ライヴ】
新富町マデイラ
オオタマル7g,vo 小森慶子cl ねこいちperc ※禁煙>

5/26(火)19:30-
【ねこに聞かせるサムバ+1】
西荻窪音や金時
オオタマルg、中川恭太cl、かみむら泰一sax

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