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[後記] 『Saudade Session 《サウダーヂ・セッション》』



 ~ Cabocla Jurema 《カボクラ・ジュレーマ》 ~


    彼女の羽飾りは緑色、それは海の色


    それは、カボクラ・ジュレーマの色 ..



    わたしは、あの澄んだ水を浴びる


    海の女神《ジャナイーナ》が作る雨を ..





※ 森林の女神《カボクラ・ジュレーマ》はブラジル先住民族トゥピナムバの伝説の女性。




「今日はブラジルでは、全土で雨が降っているみたいだよ」と、携帯で世界の天気図をみていたアケタの店、マネージャー・音響担当の島田さんが、開演直前に教えて下さいました。

あれだけ広い国土のブラジルで、どの都市でも同じ天気で雨というのは珍しいのかも。 これも "カボクラ・ジュレーマ”が雨を呼んでいるのでしょうか。



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コントラバス奏者の 吉野 弘志さんの声で、今回初の顔ぶれでのセッション・ライヴでした。その名も 《サウダーヂ・セッション》! 日頃からブラジルの音楽と接することに慣れてしまっている私のような人間だと、中々こういうネーミングは(直球すぎて)はずかしいから避けるのですが(笑)。。今回は サウダーヂ という言葉自体も改めてよくよく見直させてくれる機会だったような気もします。良く聴きなれた曲にもなんだか新鮮な心持ちで接することもできましたし。




《出演メンバー》

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吉野 弘志 (コントラバス)

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今泉 裕 (クロマチック・ハーモニカ)

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オオタマル (アコースティック・ギター)


サウダーヂ とは、人によっていろいろな捉え方や訳し方がされていますが、それにぴったりな日本語の単語は無いとも言われています。行ったことのある人は誰しも経験したことがあるかもしれませんが。 私の場合は、十年前にブラジルを旅したあとに、日本に帰国してしばらく心に感じていた《あれ》のことかと、認識しています。喪失感というか切望感というか、空虚感というか.. よく"郷愁"とは訳されますが、それとも何か少し違うような..でも、何とも切ない感覚です。でもけっして後ろ向きな感じでもなく、離れた場所でさまざまな別の時間が進行していると思うと、なぜか少し元気にもなるような。。 春先のこの時期にはとくに、なぜかそんな事をよく感じる。


さて、サウダーヂ・セッション。


第一ステージでは、カルロス・リラ & ヴィニシウス・ヂ・モラエス共作の2曲から始めました。"Minha Namorada (私の恋人)"そして、"Primavera (春)"をメドレーで..

ハーモニカの音色と、春の空気とが混ぜ合わさったサウダーヂ感が、会場を満たします。こういう曲は今泉さんの得意分野ですね。。"Primavera (春)"は、とくにこの時期にはギターのソロとしてもよく弾くのですが、3人での演奏はより色彩が豊かで奥行きがあり響きが楽しめました、またやりたい。

つづいて、シコ・ブアルキ作曲のレパートリー"João e Maria (ジョアンとマリア)""Tatuagem (タトゥー)""Samba do Grande Amor (大いなる愛のサンバ)"..

日本で、これほど沢山の シコ・ブアルキ の曲をレパートリィに持つ人も少ないでしょう、しかもハーモニカのインストゥルメンタルで。。

"João e Maria (ジョアンとマリア)"は今回はじめて演奏しました。ブラジルではグリム童話の"ヘンゼルとグレーテル" が"ジョアンとマリア" だそうです。アコーデオン奏者のシヴーカが1940年ころに作曲し、 シコ・ブアルキ が生まれたときにプレゼントした素朴なワルツ。そのワルツに30年後、シコがメルヘンティックな子どもの世界の歌詞をのせて出来上がったそうです。

コントラバスとギターとの対旋律が絡み合って、とても面白かったです。器楽的な曲でもあるので、ショーロ演奏者の間でももっと取り上げられたらいいんじゃないかなとも思いました。

"Tatuagem (タトゥー)" につきましては当ブログの記事でも以前取り上げましたのでこちらでご覧ください。→ [こちら]

"Samba do Grande Amor (大いなる愛のサンバ)" は確か 愛を信じて、ずっ~とまじめに(まぁ嘘なんだけど 笑)やって来たのだけれども、これからはもう違う。道端のきれいな花にも注意しながら慎重に生きて行くぞ。 みたいな男の歌だったと思います。ちょっとズッコケな感じの曲なのですが、いまの自分の心情とも(考えようによっては)近くて好きな曲です。ワンノートサンバのような半音での下降の和声進行が所々でみられ、それが転調したかたちのバリエーションとして作られていたりしてなかなか、楽曲としても知的で素晴らしい曲です。シコ・ブアルキの曲のこういう隠れた粋なところが、とても好きです。

コントラバス奏者との共演でサンバをするのは、タイム感の捉え方の違いなどから苦戦することが多いのですが今回は、吉野さんのベースラインがタイトでシャープに、噛み合って心地良くサポートしてくださいました。心地良かった。



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ファースト・ステージの後半には、3人でのショーロにも挑戦しました。アベル・フェレイラ作曲の "Chorando Baixinho (ショランド・バイシーニョ)"。次回のショーロ教室でも課題曲としてやってみようかと思っている曲です。→[こちら]

半音階や音跳びフレーズが有ったりでハーモニカでは難しい選曲をしてしまったようなのですが、今泉さんがかなり時間を掛けて練習・研究をして来て下さったようです。いつものようにショーロに慣れている人たちとの演奏とは違って、何処かぎこちなさは残りましたが、けっして馴れ合いに流れずにお互いの音に集中して演奏出来ました。とても新鮮な喜びをひさびさに感じました。しかもコントラバスからハーモニカの高音にまで至る、ゴージャスで奥行きのある広音域での贅沢なショーロ。大変ではありましたが、演っていただけてよかった。

ファーストステージの最後にはこれまた新曲。シモーニが歌っていたアウヂール・プランキとクリストヴァゥン・バストスによる共作 "Resposta ao Tempo (ヘスポスタ・アゥ・テンポ)" オリゾンタルで疾走感の有るのアルペジオは、弾いていて心地が良いです。ソロギターなどではこういう感覚は中々得られませんので貴重でした。




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セカンド・ステージの最初にはサンバの名曲から2曲、ベースとギターのみでDUOで演奏しました。カルトーラ & カルロス・カシャーサの "Alvorada (夜明け)" と、ノエル・ホーザの "Feitio de oração (祈りの姿)"。お互いの和音の付け方とメロディーの解釈が若干異なっていたので、ちょっとスリリングではありましたが、何か新鮮に感じました。コントラバスのアルコ奏法(弓による奏法)でのサンバ曲はなかなか聴けませんね。リハで吉野さんが語った、どこか《森のかほり》がしていたかもしれません 笑。モーホの素朴な音楽と森とのユニークな取り合わせでもありました。

つづいてエドゥ・ロボの "Pra Dizer Adeu (さよならを言うために)" と、ヘナート・テイシェイラ の "Romaria (ロマーリア)"を演奏しました。ロマーリアでは今泉さんとも初めて演奏でしたが、ブラジルの田舎の風景が浮かんで来そうな牧歌的な曲です。普段はサンバやショーロの様に音の数が多くて空間が埋まっている、都会のざわめきような音楽が多いのですが。そうした中で、こういう曲の有り難味を身に染みて感じます。本当に音が少なくて広々とした音の空間をしばし味わいます。弾いていて、体の間接の間も拡がって緊張が解けて行くようでした。




そしてここで、この記事の冒頭でも取り上げました "Cabocla Jurema (カボクラ・ジュレーマ)"。地球のエネルギーの循環とか、自然への崇拝とかも想像させるとても大きな曲に感じています。旋律にすごく力があります。曲の中間部分では、Samba Chula (サンバ・シューラ) のようなリズムアクセントでコール・アンド・レスポンスのような歌の場面が出て来ます。そこの部分のメロディのとりかたが難しいようで。。また演奏の機会が有ったら、そのあたりの完成度も是非とも高めたい。カボクラ・ジュレーマ、歌の持つ《力》みたいなものを強く感じさせてくれる魅力的な曲です。

そして今回のライヴの中でも実験的で、キモとなるあの超有名曲 ルイス・ゴンザーガ&ウンベルト・テイシェイラ作曲の Baião (バイアゥン)"Asa Branca (白い翼)"。ブラジル北東部の音楽では、しばしば Rabeca (ハベッカ) と呼ばれる素朴なバイオリンが16部音符を刻むことがありますが、吉野さんにコントラバスのアルコ奏法でこれをお願いしました。アレンジも少しコンテンポラリィなヴァージョンのを採用して演奏しました。なかなかワイルドで、即興もあり楽しかったです。

最後に、ドリヴァル・カイミの "Saudade da Bahia (バイーアの郷愁)" で締めくくりました。セカンドステージでは、ブラジルの中でもディープな北東部の色合いが強かったですね。

3人という小回りの利く編成から、とても多様なレパートィをと欲張ったライブでした。いろいろと新しく試すことが出来ましたし、自分自身の表現の幅も視野も少し拡げられて有意義なセッション・ライヴとなりました。何より演奏を楽しめました。



また、次回にもご期待下さい!















[ 2013/04/06 18:33 ] ライヴ・レポート | TB(0) | CM(0)
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4/4(土)15:00-
【Mesa~ブラジル音楽の食卓~】
新富町マデイラ
オオタマルg、齋藤徹cb、さとうじゅんこvo、喜多直毅vl

4/11(土)朝11:00-
【オオタマルのショーロ教室】
西巣鴨マルメラアダ

4/17(金)19:30-
【ホーダ・ヂ・ショーロ】
吉祥寺アウボラーダ

4/18(土)19:00-
【ブラジルナイト@小岩倶楽部】
小岩 カフェ小岩倶楽部
(東京都江戸川区南小岩5丁目21−15)
℡ 03-3673-3193
オオタマル7g,他 ※禁煙>

4/22(水)20:00-
【オオタマル(g,vo)のソロ】
平井タイム・アフター・タイム
※禁煙です。

4/25(土)19:30-
【オオタマルg,vo ライヴ】
吉祥寺アウボラーダ
オオタマル7g,vo 小森慶子cl 千田利貞perc

5/23(土)15:00-
【オオタマルg,vo ライヴ】
新富町マデイラ
オオタマル7g,vo 小森慶子cl ねこいちperc ※禁煙>

5/26(火)19:30-
【ねこに聞かせるサムバ+1】
西荻窪音や金時
オオタマルg、中川恭太cl、かみむら泰一sax

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